株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行氏)は、2022年8月に実施した「人的資本情報開示に関する調査結果」を公表した。今回の調査は、2024年4月に就職を予定している学生を中心に、企業に対しどのような「人的資本情報」に関心を持っているのかを調査し、企業経営や人事に資する提言をおこなう目的で実施された。
<調査概要>
調査名称 | パーソル総合研究所「人的資本情報開示に関する調査【第2回】~求職者が関心を寄せる人的資本情報とは~」 | ||||||||||||||||||
調査内容 | ・転職/就職先の検討にあたり重視する要素 ・転職/就職先の検討に使用する媒体・ツール ・人的資本情報開示項目への関心度 | ||||||||||||||||||
調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 | ||||||||||||||||||
調査時期 | 2022年8月10日~8月16日 | ||||||||||||||||||
調査対象者 | ①1年以内の転職を検討している社会人(正社員)n=4,100
②2024年春に就職予定の学生(大学生/大学院生) 男女均等割付 n=500 | ||||||||||||||||||
実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 | ||||||||||||||||||
注意事項 | ※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入したため、集計値が100%とならない場合がある。また、凡例の括弧内数値はサンプル数をあらわす |
引用元:人的資本情報開示に関する調査【第2回】~求職者が関心を寄せる人的資本情報とは~ – パーソル総合研究所
<調査結果について>
【転職先の検討にあたり重視する要素(社会人全体と優秀人材)】
1年以内に転職することを検討している社会人4,100人に対し「転職先企業のどのような点を重視するか?」の問いに対しては、以下の回答が得られた。
・給料が良い…87.5%
・ワークライフバランスを保てる…85.3%
また、調査対象の社会人から自己評価の回答をもらい「評価が高い」かつ「昇格のスピードが早い」と回答した人物を「優秀人材」として分析。社会人全体と優秀人材の調査結果を比較すると、優秀人材は企業に対し以下の要素を重視する傾向が見られた。
・裁量権があること
・新しいことに挑戦できること
・会社のビジョンやパーパスに共感できること
・フレックスタイム制など働く時間を選べること
・成長できること
【人的資本情報開示項目への関心度(社会人全体)】
つぎに社会人全体に対する「関心が高い人的資本情報は?」との問いについては、以下の回答が得られた。
・賃金の公正性…84.8%
・精神的健康…79.1%
・安全、コンプライアンス、倫理…78.4%
上記以外の設問では「休暇全般…91.6%」や「賃金全般…88.8%」といった要素に関心が強いことがわかった。
【人的資本情報開示項目への関心度(社会人全体と優秀人材)】
上記と同じ設問を社会人全体と優秀人材で比較してみる。
調査の結果、優秀人材は人的資本情報の可視化に対し、「リーダーシップ」「サクセッション(後継者プラン)」「採用」「エンゲージメント」「育成」といった点に関心が高い傾向が見られた。
また、「人的資本可視化指針」の19項目で示される「価値向上」「リスクマネジメント」の2つの観点からも見ていくと、社会人全体ではリスクマネジメントに関心が高く、一方で優秀人材については「価値向上領域」に関心が寄せられている傾向がみてとれる。
【人的資本情報開示項目への関心度(社会人の優秀人材:性別に見た傾向)】
人的資本情報開示項目への関心度について、優秀人材男女別で分析すると以下の結果となった。
・女性の優秀人材…「差別のなさ」「ダイバーシティ」「福利厚生」への関心が高い
【就職先の検討にあたり重視する要素(学生)】
つぎに2024年4月に就職を予定している500人(対象:大学生と大学院生)に「就職先に対しなにを重視するか?」を質問したところ、以下のとおり社会人と同じ結果となった。
・給料が良い…86.8%
・ワークライフバランスを保てる…86.2%
下図の黄色囲み数字部分で見られるように、学生は「成長できる」「人材育成に積極的」「強みや専門性を活かせる」といった要素が重視されている傾向もうかがえる。
また、社会人の調査結果と比較すると、学生は「社会貢献に積極的、環境に配慮している」を重視しており、ESGのE(Environment:環境)とS(Society:社会)に関心が高いことがわかる。
【人的資本情報の開示項目への関心度(学生)】
学生が関心を寄せる「人的資本情報開示項目」はどこなのかについても調査した。
その結果は以下のとおりで、ほぼ社会人と同じ結果となった。
・賃金の公正性…85.0%
・安全…82.2%
・精神的健康…81.8%
・採用…80.0%
19項目以外の設問では、社会人と同様に休暇や賃金に関する要素に関心が高かった。
【人的資本情報の開示項目への関心度(学生:性別に見た傾向)】
つぎに人的資本情報開示項目について、男女別の学生でも分析をおこなった。
結果はつぎのとおり。
・女性の学生…「ダイバーシティ、差別のなさ、育児休暇」への関心が相対的に高い
【パーソル総合研究所 主任研究員 井上 亮太郎氏】
◆人的資本情報への関心の高まりは、自社の描く経営戦略や取り組み姿勢を社内外に伝える好機。情報の受け手を想定し、上手に伝えたい |
内閣官房から「人的資本可視化指針」が発表され、ますます人的資本情報の開示に向けた動きが本格化している。 これまで情報開示の議論は、主に投資家の要求を軸に語られてきた感がある。しかし、企業のステークホルダーは投資家にとどまらない。多様なステークホルダーを念頭に、誰にどのような開示を行っていくかという視点が求められる。 そこで、本調査は転職希望者と学生を対象に、企業が開示する人的資本情報のどこに関心が高く、どのように情報を受け取っているのかを調査した。その結果、企業が情報開示していく場合に有用な2つのポイントが見えてきた。 1. 転職検討中の社会人における優秀人材は、「企業価値向上」領域への関心が高い 優秀人材は、「リーダーシップ」や「サクセッション」「採用」「エンゲージメント」「育成」といった企業価値向上の領域への関心が相対的に高かった。優秀人材へのアピールという意味では、同領域に類する開示事項および関連する取り組みを示すとともに、価値向上につながる具体的な道筋を示すことが肝要であろう。 2. 学生は、企業選びの際、「社会貢献」や「環境への配慮」を重視する傾向 近年、採用関係者の間で経験的に語られていた傾向ではあるが、学生は社会人に比べて、社会貢献や環境への配慮を重視して企業選びをする傾向が本調査からも確認された。一定の社会人経験がある群よりも、社会課題への意識が高く理想を追い求める姿勢の強さが表れていると考えられる。学生へのアピールとしては、社会的課題などに企業としてどのように向き合っているか、また、入社後にどのように関わる機会があるかなどを企業のホームページなどで分かりやすく伝えることが肝要であろう。 本調査は転職希望者と学生を対象としたものであるが、今後、企業が異なるステークホルダーを想定し、情報開示を戦略的に行っていく上での参考資料となれば幸いである。 |
<関連企業情報>
企業名 | 株式会社パーソル総合研究所 |
代表者名 | 代表取締役社長 萱野 博行氏 |
住所 | 〒107-0062 東京都港区南青山一丁目15番5号 パーソル南青山ビル3階 |
事業内容 | 調査・研究、組織・人事コンサルティング、人材開発・教育支援、タレントマネジメントに関するサービスの提供 |
公式サイト | https://rc.persol-group.co.jp/ |
パーソルグループについて | パーソルグループは、「はたらいて、笑おう」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」や転職サービス「doda」などを運営している。また持続可能な社会の実現に向けて、SDGsの達成に寄与できる企業理念を推進している。 <そのほかの運営サービス> ・市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」 ・テクノロジー人材やDX組織構築支援をおこなう「TECH PLAY」 ・クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」 |
参考URL:パーソル総合研究所、人的資本情報開示に関する調査結果を発表 社会人の優秀人材は「企業価値向上」の観点に関心が高く、 学生は「社会貢献」「環境への配慮」を重視