営業に求められるポイントはいくつかありますが、もっとも重要なのは売上の達成や成約件数のノルマ達成など「目標を達成すること」ではないでしょうか。営業担当者が目標を達成するうえで、ターゲット企業のリスト作成やアポ取得は、非常に重要な要素となります。特に営業リストの作成は、営業成績を左右するといっても過言ではありません。質の高い営業リストがあれば、商品やサービスを売りたい企業にいち早くリーチできます。また、最新の情報が網羅されている営業リストなら成約率もより高くなるでしょう。
今回は営業リストの作り方や、専門ツールを使って精度の高い営業リストを無料で入手する方法について詳しく解説します。
営業リストとは?
「営業リスト」とは、その名のとおり「営業対象の顧客や企業をリスト化したデータベース」のことを指します。
法人営業の営業スタイルとしては、おもに以下の方法があります。
上記のなかで、もっとも効率よく営業成果を出せるのが「営業リスト」を使う方法です。対象企業を選定したリストでアポを取って訪問すれば、効率よく営業ができるでしょう。
営業リストでおさえておくべき情報については、下記の表も参考にしてください。
<営業リストで網羅すべき情報>
会社名 | 会社名(読み方なども正確に) |
連絡先 | 代表者名、住所、連絡先、担当部署 |
提案に必要な情報 | 公式URL、直近実績、企業戦略 |
見込みがあるかどうかの目安 | 例:広告営業をする場合「最近広告出稿費用を使っている企業かどうか?」など |
関連企業情報 | すでに関連企業と関わりがある場合もあるため、関係するグループ企業や、取引企業の情報があれば営業しやすい |
無料で営業リストを作成する方法
営業リストを作るには、以下の方法があります。
それぞれの営業リスト作成方法については、後ほど詳しくご紹介します。
営業対象にする業態やリスト数にもよりますが、100~500社程度の営業リストなら無料で作成する方法もあります。ただ、無料でリストを作れたとしても、精度が悪かったり営業ターゲットから外れた企業リストだったりすると、効果的な営業はできないでしょう。営業リストを作るのに時間がかかったり、営業担当者自身がリスト作成に手間を取られる事態も避けたいものです。
名刺情報を収集
頻繁に展示会に出店し、商品やサービスのPRをしている会社なら、来訪者の名刺をもとに営業リストの作成ができます。
展示会でプレゼンした内容をメモしておいたり、来訪者から取得したアンケート内容などの情報をあわせて記録しておけば、より精度の高い営業リストの作成ができるでしょう。展示会に出店していない会社でも、自社の公式サイトに問い合わせがあった顧客情報などを蓄積し、一定のデータ量になった段階で営業リストとして活用する方法もあります。ただし、名刺情報や問い合わせ履歴から作った営業リストは、更新しないと情報が古くなる点がデメリットです。アプローチしても「興味本位で名刺を渡しただけで検討はしていない」など、断られるケースが多いかもしれません。
インターネットで情報を取得
インターネットを検索すれば、ある程度ターゲットを絞った営業リストの作成が可能です。自社のスタッフでWEB検索してリストを作成すれば、もちろん費用はかかりません。たとえば「求人広告営業」の対象先リストを作りたい場合は、求人サイトを検索して、人材募集企業をリストアップする方法があります。最近では、SNSを利用してプロモーションをしたり、広告を出している企業も増えています。インターネットだけではなく、TwitterやInstagramの情報を精査して、営業対象になり得る企業リストを作る方法も効果的です。ちなみに、WEBサイトを1件1件検索し、企業情報をリスト化していくのは大変な作業です。時間をかけずにリスト化したいなら、WEB情報から自動で企業情報を抽出したほうが、効率よく営業に専念できます。専門ツールには、WEBサイトに掲載されている企業データを専用プログラムで収集し、営業活動に使えるように加工する仕組みがあります。
後ほどご紹介する営業リスト提供会社のなかにも、自動抽出ツールを使ったサービスが数多く提供されていますので、ぜひ参考にしてください。
新聞、雑誌、四季報などの紙媒体を活用する
WEBサイト以外にも、紙媒体を利用してデータを収集し、営業リストを作る方法もあります。
既存の紙媒体を使って営業リストを作る場合としては、以下の方法があります。
新聞 | ・取材記事を参考に、営業ターゲットになり得る企業情報を収集する ・人材募集している企業をチェックしておく |
雑誌 | ・業界の専門誌で取り上げられた企業情報をリスト化する ・定期的に広告出稿している企業をリストアップする |
四季報 | ・上場企業の株価や業績データから、営業対象を選定する ・企業データだけではなく、特集記事をもとに最新の営業先をチェックする ※企業の連絡先や、担当部署の判明ができない点がデメリット |
ただ、新聞や雑誌・四季報などは月額の購読料がかかります。紙媒体から個別企業の情報をリスト化するのには、相当な時間と手間が発生します。専任の事務スタッフが必要になる場合もあり、場合によっては人件費を考慮し、費用対効果を試算することも必要です。
無料の営業リスト作成ツールを利用
ここまでご紹介したリスト作成のほとんどは、「アナログ的な方法」です。人の手でリストを作る場合、「費用がかからない」といったメリットはありますが、時間もかかりますしミスが発生する点に注意が必要です。可能であれば、営業リストを提供している会社の”専用ツール”の導入をオススメします。営業リスト作成ツールには有料のものと無料のものがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
<営業リストツールの特徴>
ツールのタイプ(有料or無料) | 特徴・メリットデメリット |
無料ツール(専門の業者が提供しているタイプ) ※リストツールと企業情報の両方が得られる | 〇費用がかからない ×リスト件数が少ない ×お試し期間が終了すると有料になる |
無料ツール(汎用の表計算ソフトを使う方法) ※自社で企業情報を収集する必要がある | 〇費用がかからない ×企業情報を収集するための時間や人件費がかかる |
有料ツール(専門の業者が提供しているタイプ) ※リストツールや分析ツール、企業情報のすべてが揃う | ×費用がかかる(初期費用+月額) 〇最新の企業情報が得られる 〇自社の営業目的にあった分析ができる 〇リスト情報だけではなくアポイントまで代行してくれるケースもある |
無料で利用できる営業リスト作成ツール
ここからは、無料で利用できる営業リストツールを10つご紹介します。
Excel、Googleスプレッドシート
上記のなかで、完全無料で利用できるのは「Excel・Googleスプレッドシート」のみです。ただし、ExcelやGoogleスプレッドシートを利用する場合は、前述の通り企業情報を自社で収集する必要があります。ExcelやGoogleスプレッドシート以外のツールでも、お試しや少ない件数のリスト作成なら無料で利用できます。無料ツールで試用してみたあと有料に移行することも可能ですし、契約プランによっては月単位の契約をして、自社に合わなければ短期での解約も可能です。
SalesNow
「SalesNow」は、営業支援プラットフォームサービスの一種で、「営業リスト作成」ができるツールです。初回利用に限り「無料の体験デモ」の提供が受けられますので、実際に使ってみて感触を確かめてから本格導入することも可能です。
そのほか、SalesNowには以下の特徴があります。
<SalesNowの特徴>
Excel・Googleスプレッドシート
ExcelやGoogleスプレッドシートは、すでに社内で使用しているケースがほとんどで、管理費用もかからない点がメリットです。また、自社の営業スタイルにあわせて管理フォームも自由自在に変更できるため、「自由度」の面ではオススメのツールといえます。一方、ExcelやGoogleスプレッドシートを使う方法には、以下のデメリットやリスクもあります。
デメリット
- 企業リストを手動で入手する必要があり、作成に時間と人件費がかかる
- 慣れないスタッフにより、管理ツールのデータが消される可能性もある
- 情報更新も手動でおこなう必要があり、古い情報が残ったままになるリスクがある
上記のことから、Excelなどの既存ツールを使って営業リストを作る場面としては、小規模法人やリスト数が少ないケースのみに限定されるかもしれません。
FUMAは最短5秒で無料のリストが手にはいる
FUMAは「株式会社Plainworks」が提供している、無料の企業リスト作成サービスです。FUMAには、完全無料・ログイン不要で160万社の企業データのなかから営業リストを作成できる特徴があります。FUMAには有料版もあり、無料版と有料版の違いは「付加価値データが提供されるかどうか」です。
<FUMA無料版と有料版の違い>
無料版 | ・160万社の企業データから対象を選定し、企業の基本情報が載った情報が手にはいる |
有料版 | ・営業リストに使えるようにCSVファイルで納品可能 ・無料版にはない「法人番号との紐づけ・業種細分類・財務データとの連携」が可能 |
BIZMAPSの無料プランなら月100件まで営業リストの作成ができる
BIZMAPSは「株式会社アイドマ・ホールディングス」が運営している、営業支援のプラットフォームです。BIZMAPSも無料のお試し利用が可能で、月100件までのリスト作成なら無料でダウンロードができます。データベースの抽出対象は、172万社を超えています。全国に3,200人いるリサーチャーが最新の情報をスクリーニングしているため、最新の情報が手にはいる点が特徴です。また、日経新聞などのメディアに掲載された記事をもとに、役職者の名前などもデータベース化しているため、決定権者へ直接アプローチできる点もメリットのひとつといえるでしょう。
有料プランに切り替える場合は、以下の料金体系となります。
- 都度購入の場合…29,000円/1,000件
- 定額プラン…月額6,980円/月1,000件
Musubu
Musubuは「Baseconnect株式会社」が扱う、営業リスト中心のWEBサービスです。法人営業に必要な企業リストの抽出や情報収集が、ツールひとつで完結できます。対象となる企業データは140万件以上あり、自社の営業戦略に沿ったリスト作成が可能です。毎月30件のリスト作成だけなら毎月の利用料金は不要ですが、対象企業へのメール配信機能は付きません。一方、有料プランなら「月額30,000円~」の設定が可能で、1ヶ月1,000件以上のリスト抽出も可能です。有料プランには、3,000件/月のメール配信機能も付いてきますので、より効率の高いリスト営業が可能になります。
SPEEDA
SPEEDAは「株式会社ユーザーベース」が提供している独自の営業戦略コンテンツが特徴の営業リスト作成ツールです。通常の営業リストの作成だけにとどまらず、営業戦略情報を確認する事ができます。1,000万社以上の豊富なデータからリストの作成が可能で、リスト作成に必要な情報には様々なテクノロジー最新動向コンテンツを活用する事ができます。国内企業に限らず、世界200カ国以上のグローバルな企業情報から、必要な企業を探し出すことができます。
チラCEO
チラCEOは「株式会社オンリーストーリー」が扱う決済者マッチングソフトです。9年の運用実績を有しており、リスト作成において目的の1つである営業先へのコンタクトに重きを置いたソフトです。企業の社長などの決裁権限者に直接コンタクトを取ることができるようなデータを揃えています。また営業リスト作成以外にも経営者限定のオンラインイベントなども定期的に開催されているため、そこで直接プレゼンを取るという利用方法も存在するなど、営業の結果を出すことに注力していると言えるでしょう。
リスタ
リスタは「エコノス株式会社」が提供する営業リスト作成サービスです。簡単に営業リストを作成する事に主眼をおいたサービスで、正確にはリスマというツールの中に含まれるリスト作成機能の事をリスタ(ListA)と呼びます。他にもリスト管理ツールである「Listoo」やリストに情報を追加する「ListMotto」もリスマに含まれています。機能性に優れたツール画面と多機能な性能が特徴であると言えるでしょう。
Listoru
Listoruは「商売繁盛合同会社」が運営するハローワークやiタウンページなどのWEBサイトから企業情報を抽出し、リスト化することが出来るツールです。無料で利用できる範囲が3000件までと、通常1000~2000件辺りの相場よりも多めに利用できるのが特徴です。料金プランによって情報収集範囲が広がるという形になっているため、高いプランにするとそれだけ広い範囲の企業情報を収集し、リスト化できるという事になります。
法人名簿エンジン
法人名義エンジンは会員登録不要で利用可能な営業リスト作成ツールです。無料で利用開始可能なサンプルが存在するため、そちらでまずどのようなものかお試しできます。業界指定リストの作成も可能で、特定の業界の企業のみをまとめたリストを抽出する事ができます。この目的指定リスト作成機能は業界だけの留まらず、楽天市場への出店名簿、というような限定的な目的でも抽出が可能です。価格設定に関しても、よくある一件ごとに○円という仕組みではなく、目標別の定額制となっています。
良い営業リストを作るポイント
「営業リストを自社で作る」「外注する」、どちらにしてもリストの作り方は営業責任者がルールを作るべきです。自社の営業戦略に沿った営業リストを作らないと、満足できる営業結果は出ないでしょう。営業リストを作る際は、以下のポイントに注意しながら作ることをオススメします。
- 最新情報が載っていること
- ターゲットが明確であること
- 高いデータ精度があること
最新情報が載っている
営業リストには、最新の情報が掲載されている必要があります。営業リストを外注する場合でも、定期的にスクリーニング(※)してくれる業者を選定するようにしましょう。
※スクリーニング…定期的にデータを洗い替えし、最新の情報に保つこと
古い営業リストを使うと、以下の事態が発生するかもしれません。
- 電話をかけても会社が存在せず、営業効率が下がる
- 相手先企業の方針が変わっており、営業しても話がかみ合わない
- 主幹部署が変更になっており、決定権者までたどり着くのに時間がかかる
営業リストには、クラウド上で常に最新のデータを提供してくれるタイプと、納品後の情報更新はおこなわないタイプの2種類があります。
月額のランニングコストをかけてでも、最新の情報に更新してくれる会社を利用するようにしましょう。
ターゲットが明確
営業リストは、営業成果を最大限出すことが目的です。
したがって、見当違いの会社の情報が含まれていたりすると、かえって営業効率が悪くなります。営業リストを作成する際には、ターゲットを明確にしてからリスト作成するようにしましょう。効率よく営業するには、リスト作成時に以下のポイントをおさえておくようにしましょう。
- 自社商品やサービスを求めている企業の情報が網羅されているか?
- 営業先が自社の営業エリア内に限定されているか?
- 相手企業に支払い能力はあるか?(赤字企業の場合、未回収リスクがあるため)
- 相手企業の動向と自社商材はマッチしているか?(例:採用広告を多数出稿している企業に広告営業をすると受注確率はアップするなど)
リストを外注する場合は、上記のような選定項目の指定が可能です。
「こだわりをもった条件選定」が、良い営業リストを作成するコツといえるでしょう。
高いデータ精度
営業リストの求められる「高いデータ精度」とは、以下のような状態を指します。
- 過去の営業済企業が除外されている
- 会社名と屋号名が二重登録されているなど、データの重複がない
- 最新の営業結果や取引情報が反映できる
- 相手先企業からの問い合わせ履歴などが、誰でも閲覧できる状態になっている
上記のような精度の高い情報を保つには、営業リストの活用以外に、SFAやCRMなどの顧客管理システムとの併用も検討しましょう。
それぞれ月額費用や専任の管理スタッフも必要になりますが、リストをもとに高い営業結果を出したいなら、多少の投資は必要かもしれません。
まとめ
営業リストは、リスト整理→アポイント→プレゼン→成約といった営業プロセスの効率を上げるには有効なツールです。今回の記事でお伝えしたように、営業リストはWEB検索や紙媒体から情報を収集し、費用をかけずに作成することも可能です。しかし、営業成果を最大限出すには営業リストの取得費用を「必要経費」と考え、ある程度の出費は覚悟したほうがいいでしょう。一時的に費用の支払いが必要でも、あとで大きな営業成果となって、もどってくること間違いなしです。ご紹介した有料無料の営業リスト作成ツールを参考に、ぜひ自社商材にあったリスト作成にチャレンジしてみてください。