業務の効率化という観点からインサイドセールスが注目を浴びています。直接訪問するフィールドセールスの補助的な存在と見られていたインサイドセールスですが、KPIの効果測定が容易なことからメインの営業になりつつあります。インサイドセールスのKPIはどのように設定してどのように改善しているのでしょうか。この記事ではインサイドーセールの代表的なKPIと効果測定に役立つツールを紹介します。インサイドセールスのKPI設定で悩んでいる方は是非ご参考にしてください。
インサイドセールスとは
セールスにはフィールドセールスとインサイドセールスがあります。フィールドセールスは直接の受注を取ってくる仕事です。取れたアポを元に顧客へ訪問し、契約をクロージングします。一方でインサイドセールスは顧客への訪問を行いません。リモートで電話やメールを用いて商談を進めます。内勤営業と呼ばれることもあり、顧客との関係性を密にした上で長期的な売上に繋げていくのが特徴です。
インサイドセールスでの代表的なKPI
インサイドセールスの目的は顧客との関係構築と長期的な売上の獲得です。最終的には売上に繋げる必要があるのでプロセスにKPIの設定を行うことが多くなります。ここでは4点のKPIの設定方法を解説します。それでは見ていきましょう。
商談化数
最も分かりやすいKPIは商談化の数です。インサイドセールスとして獲得できる売上に近いフェーズになります。商談に繋げるのは容易ではなく顧客との信頼関係がなければ失注してしまいます。インサイドセールスとして最もスキルが必要になる業務です。商談数をKPIに設定する際に必要なのがどのような商談を獲得するのかということです。
自社の提案活動なのか顧客の問題点のヒアリングなのか導入を検討するための商談なのか、内容を把握するようにしましょう。またどんな顧客情報を獲得したかで商談の価値を評価する必要があります。予算・決裁権・ニーズ・導入時期のどの情報まで獲得すればKPI達成になるか具体的に設定することが重要です。客観的な数値で判断するようにしましょう。
架電数・通話時間
最も分かりやすい指標が架電数と通話時間です。電話をどれくらいかけたのか、繋がった電話でどのくらい話ができたのかをKPIに設定します。KPI設定では数値化がうまくいかずPDCAをうまく回せないことは少なくありません。そうすると最終的な売上にも繋がらず業務担当者は疲弊しがちです。架電数と通話時間をKPIに設定することで淡々と数値だけを追うことが可能です。数を打つことが必要な価格の低い製品を扱うときに有用なKPI設定と言えるでしょう。
またチームの立ち上げ時期や商品の販売開始時期に架電数と通話時間をKPIに設定するのもおすすめです。というのもデータが集まっておらず、市場の反応を見ることが必要だからです。架電数と通話時間のKPI設定はデータを集めるときに効果を発揮すると言えるでしょう。
受注数・受注率
最終的な受注数と受注率をKPIにする場合もあります。受注業務はフィールドセールスが担っている場合が多いため効果測定は簡単ではありません。しかし最終的なゴールは売上の獲得です。ゴール地点まで設定をすることで逆算してアポの獲得や架電を行うことができます。例えばインサイドセールスがヒアリングする際にどの情報があれば製品を買ってもらえるかを強く意識するようになります。数を稼ぐためのアポ獲得や架電は減り、質の高いインサイドセールス活動を展開できると言えるでしょう。
またフィールドセールスと目的を共有することでシナジー効果が生まれます。最終的なゴール地点が同じため意識のズレが生じません。インサイドセールスとフィールドセールスが協力して大きな結果を生みやすくなるKPI設定と言えるでしょう。
メール開封率
営業活動のはじめに有用なKPI設定がメールの開封率です。バラツキが大きくなることもあるため開封数のKPI設定は多くありません。メルマガや商品の案内などを顧客へ案内し、メールを開く人の割合を目標にします。一般的な開封率は15%から25%です。もし開封率が低い場合はタイトルやターゲットを見直すことで開封率を向上させることもできます。
商材に興味関心があるかを調べることができ、一般的な開封率や改善方法も分かっているため設定しやすいKPIと言えるでしょう。またメール内にリンクやホームページを載せることで送客率をKPI設定にすることもできます。メールの開封率だけではKPI設定が心配という方におすすめです。
インサイドセールスKPI設定のポイント
インサイドセールスの最大のゴールは売上の獲得です。ただ漠然とKPIを設定しても売上には繋がりません。それではどのように効果的なKPIを設定すればいいのでしょうか。具体的に4つの方法を解説します。
事業のフェーズを理解しKPI設定を行う
事業のフェーズごとに効果のあるKPI設定は異なります。事業のはじめはデータが溜まっていないため量を追うKPI設定が必要になります。メールの開封率や架電数や通話時間をKPIに設定することがおすすめと言えるでしょう。純粋に量を追うことができ、情報をストックしながらPDCA を回していくことができます。
次に情報が集まり商品の売り方が分かっていく段階になると商談数をKPIに設定します。ファーストコンタクトは問題なくても商談のアポを取れないことは少なくありません。商談には自社の製品に強く興味を持ってもらう必要があります。そのためひとつステップを進めて商談数をKPI設定にするようにしましょう。
最後に商談を取れる段階になれば受注数をKPIに設定します。最終的な目標は売上の獲得です。そのためゴールから逆算できるKPI設定を行うのがおすすめです。フィールドセールスと協業することで提案内容や打つ方策を増やすことができます。商談獲得までのノウハウが積み重なったら受注数を目標にしましょう。
組織やチームのKPIと個人のKPIを分けて設定する
KPIの設定で重要なのが組織やチームと個人のKPIを分けることです。組織と個人のKPIを一緒にすると抽象的すぎたり具体的すぎたりして効果は望めません。まず組織で大きなスパンで売上の目標を立てましょう。例えば半年間で売上3億円の獲得などの設定を行います。続いてその大きな目標を達成するためのチームのKPIを設定します。
例えば新規顧客の商談数100件以上獲得などです。最後に担当者の目標設定です。架電数やメール開封率などの細かいKPI設定を行いましょう。会社は組織で動いており役割は同じではありません。しっかり階層別に目標設定することが効果的なKPI設定のポイントと言えるでしょう。
他部門とKPI共有
インサイドセールスのKPI設定は最終的な売上に繋げるためにあります。しかし最終的な売上に繋げる商談はインサイドセールで行わないことも少なくありません。フィールドセールスで行うことがほとんどです。そのため売上に繋げるためにはフィールドセールスとの協業が不可欠と言えるでしょう。ゴールを決められなかった場合、フイールドセールスから理由を聞いて、PDCAを回していくことが必要になります。もしインサイドセールスだけでKPI設定をした場合売上に繋がらない設定になる可能性もあります。アポは取れたものの、聞き取りが足らず刺さる商談をできないというケースも少なくありません。PDCAを回すには情報共有が不可欠です。売上に繋げることを念頭におき、フィールドセールスを含めた他部門とKPIの設定を行うようにしましょう。
KPIは定期的に振り返り・見直し
KPIの設定は、定期的にメンテナンスが必要になります。というのも、アクションする前に定めたKPIが現実に即していないこともあるからです。例えば、1件の受注獲得のために、100件の商談獲得をKPIに設定したとしましょう。商品の需要が思ったより高く、1件の受注獲得のために、50件の商談獲得で済むケースも少なくありません。いたずらに商談獲得を多くしても、フィールドセールスが対応できず、売上機会を逃してしまう可能性があります。また、商談数は取れても受注に繋がりにくい場合、決裁者へのアポを増やす必要もでて来るでしょう。現実と乖離したKPIを設定した場合、売上に繋がらず組織のモチベーションも下がります。そのため、1度設定したKPIは定期的に見直すことが大切です。
KPI達成のために改善するポイント
売上を獲得するためにKPIを設定しても達成できないことは少なくありません。未達が続くとインサイドセールスの担当者のモチベーションも下がります。その場合に必要なのがKPI達成のための改善活動です。それではどのように改善を進めればいいのでしょうか。ここではKPI達成の改善ポイントを解説します。それでは見ていきましょう。
商材とターゲットがあっているか
商材とターゲットに乖離がある場合KPI達成には繋がりません。顧客が安価な製品を求めている状況で高単価で高機能なものを売るのは難しいです。自社の製品の機能や価格、マッチするターゲットは成果が出てない時は必ず確認するようにしましょう。まずは売上に繋がらなかった顧客と売上に繋がった顧客から理由をヒアリングすることが重要です。
自社の製品が市場でどのように見られているのかが分かれば攻略する層が分かってきます。攻略する層に売り込めば思った以上に製品が売れることも少なくありません。KPIを達成できないときこそ商材とターゲットをデータと市場の客観的な声を元に見直すようにしましょう。
顧客との接点を増やす
製品が認知されていないと顧客は興味を持ってくれません。顧客との接点を増やし、自社がどのような製品を扱っていてどのような課題を解決する企業なのか認知を獲得していきましょう。例えば認知の獲得にはメルマガなどが有用です。開封率にバラツキがあってもメールのタイトルだけでも見てもらえればどんな企業なのか徐々に知ってもらえます。
もし予算をかけられるのであればリスティング広告もおすすめです。潜在顧客へのアプローチは容易ではありません。Web広告を使用することで、自社では想定していなかった顧客へ届く場合もあります。また、コンタクトを増やせば、単純接触効果で企業への親しみも湧いてきます。顧客とのコンタクト数をサブKPIに設定するのも有効です。KPIを達成するために、まずは認知度の向上を目指して顧客との接点を増やしていきましょう。
顧客と関係性を築く
KPI達成には顧客との信頼関係が不可欠です。もしKPIが達成できていない場合、信頼関係を構築する施策を打つようにしましょう。
例えば困りごとのヒアリングから入るのが有効です。困りごとを解決すれば信頼度は上がります。他社とセールスで差別化できるため、おすすめです。また、報連相の漏れで商談がなくなることは少なくありません。顧客との関係性を築くためには、即レスを心がけましょう。基本的なことを積み重ねることで顧客との関係性はよくなります。長期的な目線で活動するのが重要です。
ツールを使ってKPIの効果測定を行う
PDCAを回すのに重要な項目はチェックです。チェックするためには客観的に分析することが必要ですがデータがないことも少なくありません。そこでツールを使ってKPIの効果をデータとして積み重ねることが重要になります。ツールを使えばメールの開封率や商談数、受注率などすべて記録できます。もし担当者にデータの記録を任せていると抜け漏れや人によって集計のタイミングが異なったりしてデータにバラツキが出ることも少なくありません。ツールを使用することで自動的かつムラなくデータを収集できます。
KPI達成できない際に改善活動を進めるのにおすすめと言えるでしょう。またコンタクト履歴やどのようにアプローチしたかも記録に残せるため成功事例を展開することも可能です。KPI達成までの期間を少なくすることもできます。そのためツールは積極的に導入した方がいいと言えそうです。
インサイドセールスのKPI効果測定に役立つツール
インサイドセールスのKPI効果を測定するにはツールの活用がおすすめです。組織としてデータを蓄積できるため改善活動が進めやすくなります。それではツールにはどのようなものがあるのでしょうか。ここではインサイドセールスのKPI効果測定に役立つツールを紹介します。
MAツール
MAとはマーケティングオートメーションの略語で、マーケティング活動を支援するツールのことです。インサイドセールスのはじめのステップである見込み顧客の創出と管理に強みがあります。メールの開封率やURLのクリック率、返信率の測定は人手で行うことは容易ではありません。MAツールは工数のかかる集計作業を自動で行ってくれます。見込み度合いの点数化や見込み客のリスト化も行ってくれるため、優先順位をつけてセールス活動を行えます。またメールだけでなく自社ホームページの行動も分析できます。
自社のホームページでクリック率の高いコンテンツをメールの内容に盛り込んだり、アクションのあったメールの内容をもとにホームページを改善できたり、様々な相乗効果が見込めます。見込み客の獲得ができなければ売上の獲得には至りません。インサイドセールスに重要な入口部分をサポートしてくれるツールと言えるでしょう。
SFA
SFAとはセールスフォースオートメーションの略で営業活動を支援するツールのことです。商談やクロージングなど見込み客へのアクションの支援に強みがあります。営業活動は属人化することが少なくありません。属人化してしまうと人によって受注率が大きく変わってきてしまうのでKPIは達成できません。平準化して組織としての受注率を上げるために営業活動を数値化する必要があります。具体的には顧客情報はもちろんのこと訪問数や受注率の管理も可能です。客観的にKPI効果を測定できると言えそうです。
またフィールドセールスの情報をインサイドセールスで共有できます。KPI達成のためにはインサイドセールスとフィールドセールスの連携が不可欠です。SFAは商談などのKPI効果を測定できて部門間の連携を強化するツールとも言えるでしょう。
CRM
CRMとはカスタマーリレーションシップマネジメントの略で顧客関係を管理するツールのことです。顧客からのアクションに対しての行動支援に強みがあります。顧客との関係が構築できないと売上には繋がりません。またインサイドセールスは長期間に渡って顧客と関係を構築する必要があります。
CRMでは情報管理はもとよりメール配信や問い合わせリピート率の管理が可能です。インサイドセールスの入口部分をサポートしつつ顧客との関係を深めてリピートに繋げられると言えるでしょう。売上拡大のためには既存顧客を逃してはいけません。既存顧客を囲い込みつつ新規顧客を見つける必要があります。CRMは売上を守ってくれるツールと言えるでしょう。
まとめ
非対面でデータを元に営業活動を行うインサイドセールスは企業の売上拡大に不可欠です。また、インサイドセールスの成果を出すには効果的なKPI設定が必要になるでしょう。事業のフェーズによって効果的なKPIは変わってきます。しっかりKPIを設定し、場合によってはツールを活用しながら改善していくことが大切です。