営業現場で顧客にアプローチする方法としては、訪問・電話・メールなど、さまざまな手段があります。それぞれのアプローチ方法には一長一短がありますが、効率よく営業成果を出すには営業メールが効果的です。ただ実際の営業ではメール営業に関してネガティブなイメージを持つ担当者も多いのではないでしょうか。
- 営業メールを送っても開封されないのでは?
- 開封されても本文が読まれないのでは?
- メールを送り続けると、顧客に悪いイメージを持たれるので送信したくない
メール営業で効果を出すには件名やメール本文の書き方を工夫する必要があります。顧客に読まれるメールを書けば営業メールを使って以下のような効果を出すことも可能です。
<営業メールの効果>
- 短時間に大量のメールを送れるので、効率よく自社商品をアピールできる
- 訪問や電話のように相手先の時間を奪うことなく営業ができる
- 資料やデータを添付できるので、あとで見返してもらえる
今回は営業メールの開封率向上のコツを詳しく解説します。
営業メールは「件名」が重要
毎日大量のメールを受け取っているビジネスパーソンにメールを開封してもらうには「興味を引く件名」がとても重要です。一般社団法人日本ビジネスメール協会が実施した「ビジネスメール実態調査2021」では、メールに関する実態が報告されています。調査結果を見ると一般的なビジネスパーソンは「1日平均51.1通のメールを受信している」とのデータが報告されています。営業メールを送る際には、大量のメールに埋もれてしまわないような工夫が必要です。
<一般社団法人日本ビジネスメール協会 ビジネスメール実態調査2021より>
- メールの1日平均は送信「13.63通」受信「51.1通」
- メールを1通読むのにかかる時間は平均1分21秒
- 1日のメール処理時間は平均2時間30分
引用元:ビジネスメール実態調査2021
開封される営業メールの件名には一定の法則性があります。世の中には情報が溢れていますし、なかにはスパムメールのような「開封してはいけないメール」も多数送信されています。重要なメールと認識してもらうには以下のような工夫をしてみましょう。
<開封される件名の例>
緊急性 | 特典の締め切りを件名に入れる |
限定情報 | 特定の顧客だけに送信していることを伝える |
プレゼント | 受信者だけが応募できるプレゼント情報を掲載する |
当事者性 | 「自分に関係がある」と思わせる件名にする |
どんな件名にすると効果が上がるかについては、のちほど詳しく解説します。
一般的なメールの開封率
営業メールで成果を出すには開封率などの「各種指標」を考える必要があります。下記で詳しく解説しますが一般的な営業メールの開封率は20%前後です。1,000件のメールを送っても200件程度しか開封されない計算になりますので、多くの顧客にアプローチしたいなら大量のメールを送らなければいけません。ちなみに営業メールの効果をはかる指標としては、以下のデータも用いられます。この記事でも出てくる指標ですので参考にしてください。
<営業メールの効果をはかる指標>
- 開封率…開封数÷メール配信数(平均値20%前後)
- クリック率(CTR)…本文URLのクリック数÷メール配信数(平均値2%前後)
- 反応率…本文URLのクリック数÷メール開封数(平均値8~10%前後)
ちなみに開封率は業種によっても違ってきます。普段メールのやり取りが企業文化として定着しているような業界は開封率が高い傾向にあります。
<おもな業種別営業メールの開封率>
業種 | 開封率 |
広告/マーケティング | 20.5% |
日用消費財 | 20% |
レストラン/フード関連 | 18.5% |
不動産/デザイン/建設 | 21.7% |
小売業 | 17.1% |
一般的なメールのCTR
「CTR」とはClick-Through Rateの略で営業メールの効果をあらわす指標のひとつです。CTRはメール送信数を母数とし、本文記載のURLがクリックされた率を割り出します。営業メールを送っても内容をよく読まずに削除されてしまってはなんの意味もありません。メール営業では本文を最後まで読んでもらい返信をもらったり、自社サイトにアクセスしてもらうことが重要です。クリック率にも2つの指標があります。
1.送信数に対するクリック率…クリック数÷メール送信数
2.開封数に対するクリック数…クリック数÷開封数
メール営業の効果検証ではどちらも重要な指標ですが、送信数に対するクリック率は件名や差出人の名前が大きく影響してきます。一方開封数に対するクリック率はメール本文の内容や画像の使い方などが関係します。営業メールを送る場合は定期的に各指標をチェックし、PDCAを繰り返しながら試行錯誤していくことが重要です。
開封率を上げる件名のコツ
営業メールの開封率アップには「読んでみたい」と思わせる件名を書くことがポイントです。自分宛に届くビジネスメールやメールマガジンを見ても、各社とも工夫している様子が伺えるでしょう。自分が送ったメールを読んでもらうためには以下のような件名がオススメです。
- わかりやすく簡潔な件名にする
- 数字や効果的な単語を盛り込む
- プロフィール写真を顔写真に設定する
わかりやすく簡潔に
さきほどご紹介した「ビジネスメール実態調査2021」の結果にもあるとおり企業の担当者は毎日50通以上のメールを処理しています。メールのやり取りが多い企業では1日のメール受信件数が100件を超えるケースもあります。大量のメールに埋もれてしまわないためには「わかりやすく簡潔な件名」が重要です。メール営業で注意したいポイントをまとめていますのでぜひ参考にしてください。
◆件名は25文字以内にする…人間が瞬間に認識できる文字数は13文字です。ダラダラと書くよりも、伝えたいキーワードを中心に、多くても25文字以内におさめるようにしましょう。
◆先方担当者名を入れる…件名を見ただけで「自分に関係がある内容」と判断してもらうことが大切。相手先企業の担当者名がわかる場合は件名に入れると効果的です。
◆同じ件名の使いまわしはやめる…過去メールと同じ件名を使うと読まれなくなります。”最新情報が見れるかも?”と、ワクワクしてもらえるような件名にしましょう。
数字や効果的な単語を盛り込む
メールの件名に具体的な数字を入れるのも効果的です。件名に数字や具体的な単語を入れるパターンと入れないパターンで比較してみると以下のような違いがあります。
<件名に数字や効果的な単語を入れる/入れないの比較>
単語や数字を入れない場合 | 単語や数字を入れた場合 |
割引セール開催中!いますぐお越しください! | 最大80%割引セール!あと6日で終了します! |
ユーザーから絶大な評価を得た商品 | 購入者の95%が高評価! |
東京でいま話題のスイーツ | 渋谷区の主婦40%がリピートする噂のスイーツ |
曖昧な表現で書いた件名より具体的な数字や名詞を使うほうが「件名だけで内容をイメージしてもらえる」メリットがあります。件名に興味を持ってもらえたらあとは本文を見てもらい、自社サイトに誘導できればメール営業の目的はひとまず達成といえます。ちなみに以下は一般社団法人日本ダイレクトメール協会が実施した「広告としてのDMの現状」に関する調査結果です。この調査のなかに「Eメールを受け取ったときの対応」に関するデータがあります。データを見ると広告メールを受け取った人の57.6%が「件名を見て開封するかどうかを決める」と回答しています。忙しいビジネスパーソンにメール本文を見てもらうには、いかに件名が重要かがおわかりいただけるでしょう。
一般社団法人日本ダイレクトメール協会調査/広告メディアとしてのDMの現状
※出所:日本郵便株式会社自主調査より
プロフィール写真を顔写真に設定する
届いたメールを開封するかどうかは件名と同じく「差出人」も重要なポイントになります。重要な人物や貴重な情報を届けてくれる人からのメールは開封するケースも多いでしょう。一方それほど重要ではない人からのメールや、定例報告のメールなどは後回しにしがちです。営業メールでも同じで差出人の名前やプロフィール写真にはこだわることをオススメします。可能であれば顔写真が見えるようなメール設定も効果的です。また、提案する商材によって男女の担当者を替えてみる方法もあります。女性向けの商品などは男性の名前で送るより女性の名前で送ったほうが開封率は高い傾向にあります。業種にもよりますが会社名ではなく個人名でメール送信する方法もあるでしょう。いくつかのパターンを試しABテストを繰り返しながら開封率の高い方法を探すのがメール営業成功の秘訣です。
CTRを上げるメール本文のコツ
効果的な件名を考えて開封してもらったら今度はクリック率を上げるための工夫が必要です。開封されてもすぐに破棄されるようなメールだと意味がありません。クリック率を上げるには以下のような工夫をしましょう。
- 用件を簡潔に明確に書く
- 求めるアクションやアポ日時を具体的に記載する
- メールが開封されやすい平日の日中に送付する
用件を簡潔に・明確に
人が1通のメールに割く時間は「約7秒」です。つまり7秒間メールの本文を見て「自分に関係がない」と思われてしまうとメールはゴミ箱行きになってしまいます。7秒で興味を持ってもらうには本文の冒頭で書く「要点をついた文章」がポイントになります。ビジネスメールにありがちな「時候の挨拶」などは不要でしょう。またメールを受信している人はパソコンで見る場合もあれば、スマートフォンやタブレット端末で閲覧している場合もあります。小さな画面で見ていることも想定しできるだけスクロールせずにリンク先に誘導することも重要なポイントです。ダラダラと内容を書き肝心のリンク先がメール本文のずっと下のほうにあるようではクリック率は上がりません。また受信したひとを迷わせないためにも提供するコンテンツはひとつに絞るほうがいいでしょう。キャンペーンやコラム、定例のお知らせなどを一通のメールに詰めこむのはオススメできません。
求めるアクションやアポ日時を具体的に記載する
7秒間で判断してもらうには顧客に求めるアクションや日時に関する情報を具体的に記載しましょう。メール本文に興味深い内容の文章が書かれていても「結局なにをすればいいの?」となってしまってはせっかくのメールも台無しです。たとえば自社の展示会にお客さまを誘導したいときのメールで考えてみましょう。
【悪い例】
新商品展示会を開催します。内容や日時は本文の最後でお伝えします。新しく発売する〇〇を実際に手に取ってお試しいただけます。
【良い例】
〇月〇日に幕張メッセで新商品展示会を開催します。すでに100社から予約殺到中の〇〇を試せるチャンスです!ぜひお越しください。
【良い例】のメールは、具体的な日時が明確です。「展示会に来て欲しい」とのお願いが冒頭で書かれているため、興味がある人は展示会に関するURLをクリックしてくれるでしょう。テキストメールを送る際には罫線や記号などを上手に使い、日程や場所などが直感的にわかるような体裁にすることも大事なポイントです。
メールが開封されやすい平日の日中に送付
開封後のクリック率を上げるにはメールの送信日時も工夫しましょう。業種にもよりますが一般的な企業の担当者は土日が休みです。したがって金曜日の午後から月曜日の朝にかけてのメール送信は控えることをオススメします。月曜日は仕事はじめの曜日でもあり、週末に届いたメール処理に追われることも考えられます。営業メールを送るなら火曜日から木曜日がベストタイミングです。また営業メールを配信する時間帯にも配慮が必要です。決裁権のある役職者の場合日中は会議などで時間を割かれることも多く、仕事前や昼食後にメールを開封する傾向があります。1%でも多く開封してもらい自社サイトに誘導したいなら火曜日~木曜日の8時~9時が最適な時間といえるでしょう。メール送信ソフトによってはタイマー送信も設定できますので一度試してみてください。
営業メールでやってはいけないこと
何度もお伝えしているとおり営業メールの中身を見るかどうかは件名や差出人を見た瞬間に判断されてしまいます。メールにNGワードが書かれていたり、誤字脱字があったりするとそれだけでメールは削除されてしまうでしょう。最後にメール営業のNG行動をいくつかご紹介します。
NGワード
企業の責任者は毎日大量のメールを受け取っていますので、基本的に営業メールは後回しにします。企業によっては「怪しいメール」「攻撃型迷惑メール」とも思えるようなメールは設定により自動削除されてしまうケースもあります。下記に営業メールで使ってはいけないテクニックやNGワードをまとめていますので参考にしてください。
<営業メールで避けたいテクニックやNGワード>
◆Re:Fw:を件名に入れる
社内メールや重要な転送メールを装ってメールを送るのは逆効果です。スパムメールでも多用される手法ですので使用は控えましょう。
◆無料/お急ぎください!などのワード
読者を煽りすぎるような内容もNGワードです。ユーザーにとって本当に有益な情報はなんなのか、よく考えてメールを送るようにしましょう。
◆業界用語や見慣れない商品名
メールの件名や本文に難しすぎる言葉を使うのは避けましょう。件名を見た瞬間に「ややこしそう」と思われたら終わりです。
◆”いただき”を多用した本文
本文中に「〇〇させていただきます」を多用するととても読みづらくなります。「〇〇展示会の案内を送信させていただきます」より「〇〇展示会の案内です」と書いたほうが相手に伝わりやすいでしょう。上記のほかにも定期的にメールを配信している場合は配信解除方法を明示することも重要です。
誤字脱字
友達に送るメールならともかく企業の責任者に送信するメールですから「誤字脱字」には細心の注意をはらいましょう。さきほどご紹介した「一般社団法人日本ビジネスメール協会」の調査によると、ビジネスメールでの失敗第一位は「誤字や脱字※全体の50.49%」でした。一見して誤字脱字がないように見えても実は間違っていたり、まわりくどい表現を使っている場合も多々あります。誤字脱字メールを防ぐには以下のような方法が効果的です。
【誤字脱字を防ぐ方法】
◆音読する…声に出してメールを読んでみると、表現の間違いを見つけやすくなります。
◆第三者にチェックしてもらう…他人にメールをみてもらうと、気づけなかった部分も発見できます。
自分では完璧と思っても間違いに気づけないケースもあるでしょう。面倒でも送信前には声に出して読んでみること、第三者に見てもらうことを励行するようにしましょう。
まとめ
メール営業は効率が悪いようにも見えますが工夫次第では思わぬ効果を生むこともあります。相手の時間を拘束せずに提案を読んでもらえることは最大の効果といえるでしょう。しかし顔が見えないメール営業は件名や文章の書き方ひとつでつぎの展開が難しくなる場合もあります。自分が伝えたい内容より相手が欲しがっている情報を中心にメールの構成を考えるといいでしょう。